前回お話しした「自動思考」の背景にある「スキーマ」について、今回はもう少し掘り下げてみたいと思います。

私たちの思い込みや信念がどのように形成され、日常生活にどんな影響を与えているのか、一緒に探っていきましょう。スキーマって、実は無理に変える必要はないんです。
例えば「なんでも一生懸命やらないといけない」という考え方を、少しだけ「仕事にはいろいろある。真面目に取り組むべきこともたくさんあるけれど、時には『ここはちょっと力を抜いても大丈夫かも』と思える場面もあるよね」という風に変えてみる。
たったこれだけで、仕事がずいぶん楽になって、能率も上がってくるものです。気持ちが楽になるし、ストレスへの抵抗力も高まってきます。
考え方を少し変えて、問題を解決し、人間関係を改善していく。そうすれば、きっと今より少し楽に生きていけるのではないでしょうか。
そのために、いつも次の4つのポイントを心に留めておいてください:
① 自由な視点をもつ
② 現実に焦点を当てる
③問題解決を目的とする
④ 対人関係能力を向上させる
具体的には、こんなことを心がけてみてください:
① 役に立った対処法をメモしておいて、必要な時に見返す
② 困った時には「落ち着こう」と自分に声をかけて、一息ついてからもう一度問題に取り組む
③ 機会があるごとに自動思考に目を向けて、柔軟な考え方を意識する
④ 単なる気分の波と、本当の落ち込みを区別する
「Takuyaらしくない」って思う方もいるかもしれませんね。でも、こういうことを大事にしているのも、やっぱりTakuyaなんじゃないかなぁ…?
どうでしょう、この文章が固く感じるかどうかは、皆さんの自動思考におまかせします😉
なぜあの人とは話が通じないの?自分はなんでいつも同じパターンで悩むの?
「また同じことで悩んでる…」「なんであの人とは話が噛み合わないんだろう」そんな経験、ありませんか?
実は、これらの悩みの根っこには、私たちの心の中にある「思い込み」が深く関わっています。心理学では、この思い込みを「スキーマ」と呼んでいます。
スキーマって何?簡単に言うと「心のクセ」のこと

スキーマとは、私たちが過去の経験から作り上げた「心の設計図」のようなもの。もっと身近な言葉で言えば、「考え方のクセ」や「思い込み」です。
日常の例で考えてみましょう

レストランに入ったとき
- 入り口で待つ → 席に案内される → メニューを見る → 注文する → 食事 → 会計
- この一連の流れを、誰も教えてくれなくても自然にできますよね?
これは「レストラン」についてのスキーマ(思い込み)があるからです。
友達のLINEの返事が遅いとき
- Aさん:「忙しいのかな?」と思う
- Bさん:「何か悪いことしたかな…」と不安になる
- Cさん:「また無視された」と感じる
同じ状況なのに、人によって受け取り方が全然違いますよね。これも、それぞれが持っている「人間関係」についてのスキーマ(思い込み)が違うからなんです。
スキーマがあるおかげで、私たちは楽に生きられる
想像してみてください。もしスキーマがなかったら…
- コンビニに入るたびに「ここはどういう場所?何をすればいいの?」と迷う
- 友達と話すたびに「この人はどんな人?信頼できる?」と一から判断する
- 毎朝「今日は何を着よう」と1時間悩む
疲れますよね?
スキーマがあるおかげで、私たちは:
- 素早く状況を理解できる
- エネルギーを節約できる
- 新しいことも既存の知識と結びつけて覚えやすい
でも、スキーマには「困った一面」もある

「決めつけ」や「偏見」の原因になることも
- 「男性は論理的、女性は感情的」→性別による決めつけ
- 「あの学校の人はプライドが高い」→出身校による偏見
- 「年上の人は保守的」→年齢による思い込み
コミュニケーションがうまくいかない原因にも
例:「ちょっと手伝って」という言葉
- Aさんのスキーマ:「5分程度の簡単な作業」
- Bさんのスキーマ:「本格的にサポートしてほしい」
→ 結果:お互い「話が通じない」と感じる
自分を苦しめる「思い込み」も
- 「私はダメな人間だ」
- 「人は信用できない」
- 「完璧でないと愛されない」
こんな思い込みがあると、日々の生活がとても辛くなってしまいます。
スキーマはどこから来るの?特に子どもの頃の経験が大きい
私たちのスキーマの多くは、子どもの頃の経験から作られます。

子どもの頃に必要だった5つのこと
- 愛されること、守られること
- 「自分はできる」という自信
- 自分の気持ちを表現できること
- 自由に遊び、楽しめること
- 適度なルールや限界があること
これらが満たされると、健康的なスキーマが育ちます。
でも、満たされないと…
例えば:
- いつも怒られてばかりいた子 → 「自分はダメな人間」
- 親が忙しくて構ってもらえなかった子 → 「人は自分を見捨てる」
- 完璧を求められ続けた子 → 「ミスは絶対に許されない」
当時は自分を守るために必要だったこれらの思い込みが、大人になっても続いて、生きづらさの原因になることがあります。
スキーマの4つのタイプを知ろう
1. 人についてのスキーマ
「あの人はこういう人」という個人への思い込み
- 「田中さんは優しい人」
- 「山田さんは厳しい人」
2. グループについてのスキーマ
職業や性別、年齢などによる思い込み
- 「看護師さんは優しい」
- 「営業の人は社交的」
3. 行動パターンのスキーマ
「こういう時はこうする」という行動の台本
- 電車に乗る手順
- 面接での振る舞い方
- 結婚式でのマナー
4. 自分についてのスキーマ
自分への思い込み
- 「私は人見知り」
- 「私は責任感が強い」
- 「私は運動が苦手」
スキーマとうまく付き合う方法
まずは「気づく」ことから
- 「あ、今自分はこう思い込んでるな」
- 「この考え方、いつものパターンだな」
気づくだけでも、思い込みに振り回される度合いが減ります。
「本当にそうかな?」と疑ってみる
- 「男性はみんな論理的」→ 本当にみんなそうかな?
- 「私はダメな人間」→ 本当に全部ダメなのかな?
- 「あの人は冷たい人」→ もしかして理由があるのかな?
小さな「新しい経験」を積み重ねる
思い込みと違う経験をしてみることで、スキーマは少しずつ変わっていきます。
- 「人は信用できない」→ 信頼できそうな人に小さなことから頼んでみる
- 「私は人見知り」→ まずは店員さんに「ありがとう」と言ってみる
一人で難しい時は、専門家の力を借りることも
スキーマ療法という専門的な治療法もあります。特に、子どもの頃の辛い経験から生まれた深い思い込みは、カウンセラーと一緒に取り組むことで、より安全に変化させることができます。
まとめ:スキーマを味方にして、もっと楽に生きよう

スキーマ(思い込み)は:
- 私たちの生活を楽にしてくれる便利なツール
- でも時には足かせにもなる
- 変えることができるもの
大切なのは:
- 自分の思い込みに気づくこと
- それが今の自分に役立っているかを考えること
- 必要なら少しずつ変えていくこと
完璧である必要はありません。少しずつ、自分のペースで。あなたの心の「思い込み」と上手に付き合えるようになることで、人間関係がスムーズになったり、自分を責めることが減ったり、新しいことにもチャレンジしやすくなるかもしれません。
今日から、まずは自分の「思い込み」に気づくことから始めてみませんか?