コミュニケーションスタイルの定義
DESC法を説明する前に、まず私たちが使っているコミュニケーションスタイルの定義を見ておきましょう。アメリカの心理学者ウォルピィは、コミュニケーションは3つのスタイルに分かれると提唱しています。
- アグレッシブ型
- ノンアグレッシブ型
- アサーティブ型
①アグレッシブ型
アグレッシブ型は、自分の主張を押しとおしたり相手を論破したりといった、攻撃的なコミュニケーションのこと。「自分本位」「相手に指示」「自分の命令に従わせる」といった特徴が挙げられます。
相手の気持ちを無視して自分の考えを押しとおすため、意見はとおりやすいものの周囲から敬遠されたり相手にストレスを与えたりします。

②ノンアグレッシブ型
消極的・非主張型と訳されるノンアグレッシブ型は、自分を後回しにしたり、他者の主張を優先したりするコミュニケーションスタイルで、「引っ込み思案」「依存的」「他人本位」といった特徴を持ちます。
「自分が思った事柄を主張できない」「いつも他人に振り回される」と感じる状況が多いため、「なぜ相手は分かってくれないのか」というストレスが生まれるのです。

③アサーティブ型
アサーティブ型とは、自分の考えや気持ちを正直に伝えつつ、相手の反応も素直に受け止めようとするコミュニケーションスタイルのこと。
アグレッシブ型とノンアグレッシブ型の中間ともいえるタイプで、お互いの主張が違っても、そのなかから合意点を見つけていきます。そのため自分も相手もストレスが少なくなるのです。

はじめに:なぜDESC法が必要なのか
「上司に意見を言いたいけど、どう伝えればいいかわからない」 「部下の遅刻を注意したいが、関係を悪化させたくない」 「家族に家事分担をお願いしたいが、感情的になってしまう」
このような場面で威力を発揮するのが、アサーティブ(建設的自己主張)コミュニケーションの基本技法「DESC法」です。相手を責めることなく、自分の気持ちや要求を的確に伝え、建設的な解決策を導くための実践的なフレームワークです。
DESC法とは
DESC法は本来「Describe(描写する)→ Explain(説明する)→ Specify(提案する)→ Choose(選択する)」の4ステップで構成されるアサーティブコミュニケーションの手法です。
本記事では実践的な応用として、この手法をアレンジした「基礎型DESC法」をご紹介します。
基礎型DESC法:「Describe(事実)→ Express(感情)→ Specify(要求)→ Consequences(結果)」
基礎型では最後のCを「選択肢の提示」ではなく「行動の結果(メリット・デメリット)を端的に示す」形にしています。これにより、初めて使う人や確実に伝えたいビジネス場面でより効果的な手法となります
各ステップの詳細
D(Describe):事実を客観的に描写する(日時・行動・状況を具体的に) E(Express):自分の感情や影響を「私は〜と感じる/〜で困っている」の形で伝える S(Specify):相手に期待する具体的行動を示す(曖昧はNG) C(Consequences):その行動が実現した場合の結果(良い点・実務上の影響)を簡潔に伝える
基礎型のポイントは「評価・推測を極力避ける」「主語は『私』で感情を表す」「Cは現実的で脅しにならない表現にする」ことです。
DESC法の基礎(D/E/S/C)をわかりやすく解説。職場・家庭・メールで使える例文、テンプレ、よくある失敗と改善ポイントを網羅。実践で使える「そのまま使える」原稿。
DESC法は「Describe(事実)→ Express(感情)→ Specify(要求)→ Consequences(結果)」の4ステップで構成される、アサーティブ(自己主張的)コミュニケーションの基本フレームワークです。
基礎型ではCを「選択肢」ではなく行動の結果(メリット/デメリット)を端的に示す形にします。初めて使う人や、確実に伝えたいビジネス場面で効果的です。
基礎型テンプレ(そのまま使える)
D:[客観的事実を短く]
E:「私は〜と感じています/〜で困っています」
S:[具体的にしてほしい行動]
C:[その行動が実現した場合の現実的な結果(メリット、業務での改善点など)]
※全体は短く、1回で読める長さ(4〜8行)が理想。
具体例(そのまま使える基礎型の例文)
A. 同僚が会議に遅れる場合(対面)
D:先週と今週のチーム会議で、開始から10分遅れて参加されていました。
E:そのため議事進行が遅れ、予定していた議題を十分に扱えませんでした。
S:次回から会議開始の5分前に入室していただけますか。
C:そうしていただければ会議が時間どおりに終わり、資料説明の時間も確保できます。
B. 上司に納期調整を相談(ビジネス・メール)
D:先日追加された仕様により作業範囲が拡大しました。
E:現状のままでは品質を担保して期日通りに納品するのが難しいと考えています。
S:納期を1週間延長していただけないでしょうか。
C:延長いただければ品質を確保した上で納品できます。難しい場合は優先順位を再調整いただけると助かります。
C. 家庭(家事分担)
D:ここ1ヶ月、ゴミ出しと食器洗いを私がほとんど担当しています。
E:その結果、休息時間が減り疲れがたまっています。
S:週ごとにゴミ当番を交代していただけますか。
C:交代できれば負担が公平になり、休日をゆっくり過ごせます。
メールで使える短文テンプレ(例)
件名:◯◯について(お願い)
D:先日の仕様変更により作業量が増えました。
E:現状のままでは品質担保が難しいと感じています。
S:納期を1週間延長いただけますか。
C:延長いただければ品質を担保して納品可能です。
メールでは「件名」「導入の一行」「D/E/S/Cを箇条書きで」がおすすめ。受信者が一目で要点を把握できます。
使い方のコツ(実践チェックリスト)
- Dは具体的→「先週・今週」「開始から10分」など。
- Eは「私は〜」で短く(1文)。
- Sは実行可能かを自分でチェック(曖昧語は×)。
- Cは脅しではなく現実的な効果を。
- トーンは冷静に。対面はややゆっくり話す。
- 書く前に「相手の立場」を1分想像する(共感を示す要素があれば加える)。
よくある失敗と改善案
- 失敗:「あなたはいつも遅刻する」→ 改善:「先週と今週の会議で開始から10分遅れていました」
- 失敗:Eが長文で感情的 → 改善:一文で「私は〜で困っています」
- 失敗:Sが曖昧 → 改善:「来週から5分前に入室してください」のように具体化
FAQ(記事中に入れるFAQ)
Q1:DESC法と「Iメッセージ」はどう違いますか?
A:ほぼ同義で、DESCはIメッセージ(私メッセージ)を体系化したもの。D/E/S/Cの順で構成する点が特徴です。
Q2:Cで「脅し」を入れても良いですか?
A:避けてください。現実的な影響は示して良いが、脅しや感情的な圧力は逆効果です。
Q3:会議の場で言いにくい場合は?
A:まずはメールで短く伝えるか、タイミングを改めて1on1で伝えるのが実務的です。