はじめに
絵本の読み聞かせ動画を配信するYoutubeチャンネル「わっはっは絵本ch」を開設しました!
開設に至った経緯やどんな思いで発信をしているのかを書いていければと思います。
是非チャンネル登録をよろしくお願いします!

絵本の読み聞かせが心に与える影響を調べ始めたきっかけ
当事業所ではうつ病や統合失調症など、さまざまな精神障がいを持つ方々が通所しています。
事業所では動画編集も支援プログラムの一つとして教えており、そのスキルを活かして「利用者さんと一緒に発信できる動画を作りたい」と考えていました。
どんな内容がいいだろうと悩んでいたときに思いついたのが絵本の読み聞かせ動画です。
最初の発想は、海外の絵本を日本語に翻訳したり、日本の童話を英語で紹介したりといった“教養系コンテンツ”でした。
けれど考えているうちに、ふと疑問が浮かびました。
「絵本の読み聞かせって、心や精神にどんな影響があるんだろう?」
読み聞かせが、もしかしたら精神障がいの予防やメンタルケアに役立つのでは
そう感じた私は、学術的な観点からその関係を調べてみることにしました。
子どもの心の健康問題は“特別なこと”ではない
世界では、およそ5人に1人の子どもが不安やうつなどの精神的な困難を抱えていると言われています。
それほど「子どもの心の健康(メンタルヘルス)」は身近な課題です。
特に、
- 親との関係が不安定
- 幼いころの入院や家庭環境のストレス
- 経済的な不安定さ
といった「育つ環境の影響」が、後の精神障がいのリスクを高めることがわかっています。
つまり、“早い時期から心を支える関わり”がとても大切なんです。
読み聞かせとは「心を育てる対話」
「読み聞かせ(Shared Reading)」という言葉には、ただ“読む”以上の意味があります。
それは「親子で感情を共有する時間」でもあるのです。
絵本を読んでいると、子どもは自然に問いかけます。
「なんでこの子は泣いてるの?」「怖いけど、助かってよかったね」
そのたびに親は言葉を返します。
この“やり取り”が、子どもの感情の理解力(共感性)や安心感を育てます。
読み聞かせが「心の不調」を減らす理由

研究では、読み聞かせが次のような変化をもたらすことが分かっています。
① 不安や落ち込みが少なくなる
本を通して感情を言葉で表現できるようになると、「なんとなくモヤモヤする」「イライラする」といった気持ちを整理できるようになります。
これは将来的にうつや不安の予防にもつながる大切な力です。
② 問題行動が減る
読み聞かせを続けた子どもは、攻撃的な行動や反抗などの“外に出るタイプの問題”も減ることが報告されています。
これは、物語の中で登場人物の気持ちを理解する力=想像力と共感力が育つためです。
③ 親子の絆(愛着)が深まる
一緒に本を読む時間は、親子にとって「安心できる場所」になります。
声のトーン、笑顔、スキンシップ――それらが子どもの脳に「自分は愛されている」という感覚を刻み、心の安定を支えます。
脳の中でも起きている“あたたかな同期”
最新の脳科学研究では、親子で絵本を読んでいる時、脳の特定の部位が同じように反応していることがわかっています。
これを「神経同期(Neural Synchronization)」と呼びます。
つまり、絵本を通じて親子の脳が“つながる”瞬間があるのです。
この同期は、言葉の理解や共感力の発達を助ける重要なサインだと考えられています。
読み聞かせは「安くて強力な予防法」
アメリカ小児科学会は、すでに「絵本の読み聞かせ」を予防医療の一部として推奨しています。
子どもを健診に連れていくときに、医師が「本を読んであげてくださいね」とアドバイスするほどです。
なぜなら、読み聞かせは
- 費用がかからず
- 家庭で誰でも始められ
- 子どもの脳・心・社会性の発達すべてを支える
という、非常に“コスパの高い”取り組みだからです。
注意すべきポイント:「量」より「質」
ここで大事なのは、「たくさん読む」ことよりも、どう読んで、どう関わるかです。
忙しくても、1冊でもいい。
子どもの表情を見ながら、ゆっくり話をし、気持ちを受け止めてあげる。
その“対話の質”こそが、心を育てる最大のポイントです。
おわりに:絵本は心のワクチンになる
「絵本の読み聞かせで、精神障がいが防げる」と断言はできません。
ですが、確かなことがあります。
それは、読み聞かせが「心を守る力」を育てるということ。
絵本は、子どもにとっての“こころのワクチン”かもしれません。
“わっはっは絵本ch”が親子の心を育てる手助けになれば嬉しいです。

参考文献(抜粋)
- American Academy of Pediatrics「Literacy Promotion: An Essential Component of Primary Care Pediatric Practice」
- Reading to Children at an Early Age: The Emotional and Academic Impact on Later Development
- Neural synchrony underlies the positive effect of shared reading on children’s language ability (PubMed, 2023)
- School-based dialogic book sharing (Frontiers, 2024)